プログラマーはUXではなくOXを売る
ユーザーエクスペリエンス(UX)は単一ではなく、ユーザーの感情の分布として捉えるべきである。
しかし、多くのデザイナーは平均的なユーザーを想定したインターフェースを設計し、それが多様なユーザーニーズに対応できず「ジェネリック」なデザインとなる。
サイトビルダーのテンプレートは、幅広いユーザー層に対応するため、平均的なデザインに落ち着く傾向がある。
ユーザーは自身の好みを自覚しているわけではなく、デザインに触れた際に後から味見するような感覚を持つため、ジェネリックなデザインを受け入れやすい。
優れたUXとは、一部のユーザー層を意図的に切り捨てることで、特定グループの満足度を高めることである。
ウェブデザインにおける「UX(ユーザー体験)」の捉え方について、根本的な問いを投げかける記事が発表されました。従来の「UXは個々のユーザーの感覚」という考え方に対し、本質は「多数のユーザーの体験の分布」にあると指摘しています。この視点から、なぜ多くのサイトビルダーのテンプレートが似通ってしまうのか、その構造的な理由を解説します。
UXは単一の体験ではなく分布である
UXは、単一のユーザーが製品に対して感じる体験(Experience)ではありません。むしろ、N人のユーザーがその製品に対して感じる体験がどのように分布しているか(Distribution)という統計的な概念です。平均値や分散、外れ値といった統計的要素で捉えるべきものだと説明されています。この視点を持つことで、デザインの課題は「個人の満足度」から「集団の体験の統計的な最適化」へとシフトします。
平均的なデザインが生まれる構造的理由
多くのデザインが似通ってしまうのは、デザイナーの怠慢ではなく、数学的な必然性によるものだと指摘されています。例えば、SquarespaceやWixといったサイトビルダーのテンプレートは、非常に多様な業種(弁護士、ヨガインストラクター、レストランオーナーなど)のユーザーを対象としています。これら多様なニーズの平均を取ろうとすると、結果として「誰にとっても特化していない、平均的なデザイン」が生まれてしまうのです。
ユーザーの認知バイアスとデザインの受容性
では、なぜ平均的なデザインが市場で受け入れられるのでしょうか。その背景には、ユーザー側の認知的な仕組みが関係しています。ユーザーは「私はこういうものが好きだ」という明確な好みを持っているわけではなく、デザインを見たときに「空欄を埋める」形で好みを形成します。この「初めて見たものを自分の好みだと解釈する」というプロセスが、ドーパミンを刺激し、結果的に安全で馴染みのあるデザインを好む傾向を生んでいると分析されています。
データが示せないデザインの選択
A/Bテストやヒートマップなどのデータ分析ツールは、特定のデザインがどのようなユーザー層に受け入れられているかという「分布」を可視化することはできます。しかし、データは「どの分布を優先すべきか」という、デザインの方向性そのものを決定することはできません。最適なデザインを選ぶには、統計的な事実だけでなく、デザインが持つ心理的・市場的な文脈を考慮する必要があるとのことです。
デザインの未来を考える視点
本記事は、デザインを単なる美しさや機能性の問題として捉えるのではなく、集団の認知や統計的な振る舞いという視点から再定義しています。平均的なデザインの必然性を理解することは、真に多様なユーザーのニーズに応えるための、新しいデザイン思考の出発点となるでしょう。
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(Winamp, once famous for its user skins)
UX is not a singular but a distribution
The term "User Experience" is singular. One user, one experience. So we often treat UX as a question of how a single user feels about a product.
※ 著作権に配慮し、引用は冒頭3段落までです。続きは元記事をご覧ください。